アメリカの「コミュニティ・カレッジ」とは?「なかやまきんに君」も学んだ【リカレント教育】

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リカレント教育とは?

UnsplashVasily Kolodaが撮影した写真

リカレント(recurrent)とは、「繰り返す」「循環する」という意味を持ちます。
高校や大学を卒業し社会に出た後も、転職や昇進などのタイミングで必要な知識・技術を教育機関に戻って学び直したいという意欲のある人に、学びの機会を提供するのが「リカレント教育」です。

リカレント教育が盛んな国の一つがアメリカです。
その理由の一つに、アメリカの労働市場では転職が当たり前とされていることがあげられます。2021年に発表された米国労働統計局の調査によると、1957~64年生まれの後期ベビーブーマー世代は、18~54歳の間に平均12.5の仕事に就いているとされます。
「仕事の数、労働市場の経験、および収益の成長:全国縦断的調査の結果」より)

未だ終身雇用を掲げる企業が多い日本よりも転職が一般的で、よりよい職を得るべく人材価値を高めるため、年齢を問わず学び続ける姿勢を持つ人が多いといえるでしょう。

学び直しの場「コミュニティカレッジ」とは?

学び直しの場の一つとして幅広い年齢層を受け入れているのが、全米に1200校あるといわれるコミュニティカレッジです。

コミュニティカレッジは2年制の大学でその多くが公立です。
地域住民の職業訓練や生涯教育を目的に設立され、高校を卒業した十代だけではなく大人も仕事や子育てをしながら通っています。コミュニティ・カレッジは「誰でも大学教育を受けられること」がモットーのため、学費は安く入学試験もありません。高校卒業資格も問われません。

日本のお笑い芸人・なかやまきんに君がアメリカへ”筋肉留学”をしたことが有名ですが、彼が学んだのもサンタモニカカレッジというコミュニティカレッジです。

コミュニティカレッジを卒業した後に、4年制の大学に編入することもできます。コミュニティカレッジで履修した単位を使って、4年制大学の3年生学費を節約しながら4年制大学の資格を取れる進路として、若い学生にも人気があります。
他国からの留学生もおり、様々な年齢・人種のクラスメートと共に学べることも魅力です。

コミュニティカレッジで学べること・資格とは?

授業

コミュニティカレッジの授業は、4年制の総合大学と同じく多岐にわたります。
写真はカリフォルニア州のシリコンバレーと呼ばれるエリアにあるウェストバレーカレッジというコミュニティカレッジの授業カタログ(シラバス)です。

会計(Accounting)、建築(Architecture)、美術(Drawing/Painting)、写真(Photography)、教育(Child Studies)、プログラミングなどが学べるコンピューター科学(Computer Science)、経済(Economics)、ダンスやゴルフなどの体育など、ザッとめくるだけでも、様々な授業があります。
ちなみに、なかやまきんに君はカレッジで運動生理学を学んだそうです。

職業訓練・技術訓練コースでは、電気工事士やパラリーガル、警察官、整備士、看護士、保育士などに就職するために必要な知識・技術を身につける授業が中心で、4年制大学編入に活用できる教養課程的な授業は受けません。決められた授業を履修すると、サーティフィケートというスキルを証明する資格を貰えます。このコースは、通常半年~1年で履修を完了し卒業することができます。

単位

各授業で貰える単位の数に比例して、授業料が決まります。
例えば、ウェストバレーカレッジの場合、1単位=46ドルとされています。3単位貰えるコンピューターの授業は、46×3単位で138ドルです。成績はA~Dの4段階で評価されます。
一部の授業は、カリフォルニア州立大学(CSU)やカリフォルニア大学(US)といった同じ地域の名門大学の単位としても認められるため、比較的安価に学士レベルの教育を受けられるお得なシステムといえます。

授業時間

授業時間は1コマ85分、1限は朝7:15~、最終の7限は17:15~、オンラインの授業も多数あり社会人でも通いやすいように配慮されています。

資格

コミュニティカレッジを卒業すると、日本の短大を卒業して得られる「短期大学士号」に相当する「アソシエイト」という資格がもらえます。Associate in Arts (文系短期大学士)やAssociate in Science (理系短期大学士)と呼ばれるものです。

先述のように職業訓練・技術訓練コースでは、アソシエイトではなく日本の専門学校卒業資格に近い「サーティフィケート」を得られますが、州によってはAssociate in Applied Science (応用理系短期大学士号)というアソシエイト資格を授与するコミュニティカレッジもあります。

コミュニティカレッジの入学試験と費用

UnsplashKenny Eliasonが撮影した写真

費用は施設使用料など基本料金+自分が申し込んだ分の授業料です。
年間の授業料は、学校にもよりますが5,000~10,000ドル程度と、私立大学の年間授業料平均$38,000ドルに比べてかなり安価です。

ただし、留学生などコミュニティカレッジがある地域の在住期間が1年以下の人は、授業料が高額となります。例えば上記のウエストバレーカレッジの場合、1年以上の在住歴がある地域住民の授業料は1単位46ドルに対し、1年未満の人は307ドルと大差があります。

アメリカの大学入学試験は日本と異なり、高校の成績を提出することで合否が決まります。コミュニティカレッジは「誰もが学べる」ことを大切にするため、高校の成績表は必須ではなく、提出しても確認程度の扱いです。

実際に学んでみた感想は?

Unsplashsean Kongが撮影した写真

筆者も実際にコミュニティカレッジで英語を履修しました。クラスメートはインド、中国、韓国、イラン、メキシコなど国際色豊かで、授業中に自発的な発言が多かったこと、課題の量がとても多いことが日本の大学と比べて異なり、初めはカルチャーショックを受けました。

授業は全て英語で、宿題の提出やテストの受験は「Canvas」というシステムを通してオンラインで行われました。一つ一つの課題に対して、先生がきめ細かく採点・コメントを付けてくれることに感激しました。筆者が受けた授業はどれも担当の先生が情熱的で話が上手だったので、知らないうちにリスニング能力が上がっていったと感じます。聞き取れなかったところは授業後やメールで個別に質問すればサポートしてくれました。

周りの社会人は、企業でプログラマーとして大手企業に勤務しており、プログラミングの授業を受けて資格取得とスキルアップを目標にしている人や、大学編入を目標としている人、卒業資格は取らずに写真技術や英会話など興味のある授業を自由に受けているという人など様々でしたが、それぞれが久しぶりの学生生活を楽しんでいるようでした。

学校の設備も充実しており、大きな図書館で勉強をしたり、キャリアカウンセラーに授業の履修方法や進路を相談したり、チューターに宿題を見て貰ったりと、学生が無料で利用できる特典が多かったです。

日本でもリカレント教育が当たり前とされ、多様な年齢・職業の人で切磋琢磨できるコミュニティカレッジのような学び場が増えると、より人生の選択肢が豊かになりそうだと感じました。

記事の執筆者
saori

社会人11年目にアメリカ西海岸へ引っ越し。現地大学に通いリカレント教育についてリサーチ中。1児の母。

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